五十嵐家は京都にあって室町時代以来の蒔絵の名家である。初代道甫(延宝6・1678没)は京都に住して蒔絵の業を営み、前田家の御用に応じて時折金沢の地に下向していたと推測される。二代道甫(元禄4・1691没など諸説あり)は通称を喜三郎といい、加賀藩とのつながりはより密接となり、金沢に住したものと考えられる。初代・二代の作品を見分けるのは難しい。清水九兵衛とともに加賀蒔絵の基礎を築いた人物である。伝統に培われた正統的な五十嵐派の蒔絵技法は今日に継承されている。