タイトル:かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-
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かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-の作品解説電子ブックです。
26うじまさ氏政ぎん銀ぞう象がんちょう丁じちらし散もんあぶみ鐙嵌字文銘加州金沢住氏政作Stirrups, design of clove, silver inlay江戸18世紀上部の紋板正面に銀象嵌で「加州金沢住氏政作」と銘があり、正方形を横2列、縦3列に透かす。鳩胸から笑にかけての正面には、スパイスとしてつぼみも用いられる丁字(クローブ)の蕾を図案化した文様を散らす。黒い鉄とやや青みを帯びた銀色のぶどう対比が美しい。底にあたる舌裏には葡萄文が表現され、踏込は最も一般的な朱漆とする。加賀象嵌には「アリを立てる」という技法がある。もんがね紋金を嵌め込む溝を彫る際、入口よりも底部を広くする手法で、このわずかな工夫によって本作のような大きな面の象嵌も外れにくくなる。(AS)27き木ぎん銀さか坂ぞう象しげ重がん嵌やす保きく菊もんあぶみ鐙文銘加州住木坂重保作Stirrups, design of chrysanthemums, silver inlay江戸19世紀上部の紋板内側に銀象嵌で「加州住木坂重保作」とある。正面には十六弁の菊花が銀の平象嵌で表され、余白には松唐草を配する。花弁を面の象嵌で埋めたものと輪郭のみを象嵌したものがあり、全体のリズム感を生み出している。舌裏(底面)こうほねにには、スイレン科の水生植物の一種である河骨がしら流水文様が表され、力革を通すかこ頭には、水玉文様が施される。鐙は、鉄を熱し叩くことによって成形する鍛金という手法で作られ、丈夫で強い衝撃にも耐えられる。本作は踏込の板が外れており、内部に赤漆がつちめ塗られるが、その表面に鍛金による凹凸の鎚目が確認できる。制作過程がわかる貴重な作例といえる。(AS)17