タイトル:かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-

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概要

かねは雄弁に語りき-石川県立美術館の金属コレクション-の作品解説電子ブックです。

第1章用途と美金属は、古来より様々なかたちをとって道具として使われてきた。美術や展示の概念が誕生する近代以前においては、基本的に用途をもつモノがつくられ、そこに季節の事物や古典の物語などによる趣向がこらされるのが常であった。つまり日本では、あらゆる道具に美を込める行為が古くから行われてきたのである。本章では、茶道具や武具を中心として、金属作品における「用のうちに光る美」を紹介する。茶道では、様々な文様や意匠をもつ道具が席主の趣向を反映し茶席を美しく彩ってきた。金属製の道具では、湯を沸かす釜どや席入りの際に打ち鳴らす銅た焚こうくための香ろ炉ら鑼みずさしがあり、水を入れる水指、香をなどにも金属によるものが存在する。刀剣は、武器としてはもちろん、信仰の対象や儀礼の道具とはもんじがねしての側面ももつ。刀身にみえる刃文や地鉄の景色は、鉄を鍛えた工程の証であるとともに、鑑賞の対象となる。あぶみ鐙は、乗馬の際に足をのせる道具である。加賀藩におけるぞうがんは象嵌(素地と異なる金属を嵌め込んで文様とする技法)といえば、鐙の製作において名高く、加賀象嵌鐙は天下の名品として全国的に知られた。精緻に表現された華麗かつ豊富なデザインで人々を魅了し、金属を嵌め込む場所に彫る溝の底を広くすることで文様部分を外れにくくした堅牢な構造で騎乗時の激しい動きにも対応し、機能性と意匠の美を同時に実現した。本章ではこのように、機能性と美の同居を実現した作品を紹介する。使われるところを想像しながら、お楽しみいただきたい。3