展覧会
古九谷とその展開
令和3年に開催した「加賀百万石 文武の誉れ」展では、加賀藩3代藩主・前田利常が推進した古九谷の制作を、江戸幕府による禁教の状況下で、キリスト教信仰が日本・東洋文化と高度に融合した文化的所産として再考しました。文武二道の精神から、利常は江戸幕府に対して文化力で挑みました。そこで古今東西の名品の収集や、名工の招致・支援に続いて着手された古九谷のプロジェクトには、江戸では生産できない色絵磁器という日本では新しい芸術ジャンルであることに加えて、大胆かつ斬新な様式に、美しさと深い思想的な含蓄があることに戦略的な意思が示されています。
1637年に、佐賀藩は有田から日本人陶工826人を追放しています。日本人のみを追放した理由は、キリスト教信仰者の排除だったと考えられます。その年、利常は長崎、平戸に御買手を派遣して、「古き唐織の切」(名物裂)や茶道具の購入にあたらせています。その際に、追放されたキリシタン陶工とも接触し、色絵磁器生産の技術を導入する道筋が付けられたと推測されます。近年、色絵磁器に用いられた顔料の科学分析から、すでに1630年代から、来日したイエズス会宣教師を中心として、ヨーロッパ由来の顔料を用いた色絵磁器の開発が行われていたとする見解も出されています。そこで「マリア観音」の進化形として、東西のモチーフに共通する属性を基盤とした、暗示的なキリスト教信仰記憶媒体が、高山右近ゆかりの加賀藩で構想されたことは十分考えられます。

基本情報
会期 |
2023年7月29日(土)~ 2023年9月11日(月) |
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開館時間 | 9:30~18:00(展示室への入室は17:30まで) |
休館日 | 会期中無休 |
観覧料 |
一般:370円(290円)、大学生・65歳以上:290円(290円)、高校生以下:無料
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会場 | 第2展示室 |