展覧会
前田家と能
江戸時代の能は、武家の行事に欠かせない「式楽(しきがく)」として発展しました。「加賀宝生」という言葉で知られるように、加賀藩前田家は宝生流の能が盛んでしたが、藩主たちは、どのように能と関わってきたのでしょうか。
武家が能に関わるきっかけをつくったのが、豊臣秀吉です。能を愛好した秀吉は、観世・金春・宝生・金剛という四座の能役者たちを支配しようとしただけでなく、自ら演じることを好み、また自らを主人公とした能をつくりました。これら新作能は「豊公能(ほうこうのう)」と呼ばれています。
今回展示する《高野参詣》は、豊公能のひとつです。秀吉が、文禄3年に吉野から高野山へ向かい、大政所の三回忌を行うのにあわせてつくられました。法要のあと成仏した大政所が現れて、秀吉を称えるという内容で、秀吉がひいきとした金春流の能役者が、高野山の青巌寺門前で演じたとされています。
この時、高野山青厳寺に奉納されたのが、この謡本です。題箋は後陽成天皇の宸筆、本文は聖護院門跡道澄の筆によります。たいへん華麗な謡本で、全体に金の切箔を散らし、罫線には銀泥が用いられています。謡本はのちに高野山天徳院へ移り、5代藩主前田綱紀の手に渡りました。巻末には、大きく「豊臣」の朱印が捺されています。
《高野参詣》は、昭和62年以来、37年ぶりの公開です。ぜひご覧ください。
基本情報
会期 |
2024年12月14日(土)~ 2025年2月3日(月) |
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開館時間 | 9:30~18:00(展示室への入室は17:30まで) |
休館日 | 12月29日(日)~1月3日(金) |
観覧料 |
一般:370円(290円)、大学生・65歳以上:290円(290円)、高校生以下:無料
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会場 | 前田育徳会尊經閣文庫分館 |